依代
20歳を過ぎたあたりだろうか。
高校を卒業して、大学生になって行動範囲が増えた。
それもあってか、徐々に行動していたのだが、20歳を過ぎたころから、ゲイとしての自分を認めることができてきたと思う。
それまでは、否定していた。
男が好きかどうかわからないけど、求められれば体を委ねた。
誰かに必要とされたかった。
快楽に溺れた部分もあるけど、それ以上に気持ちが満たされたかった。
自分は依代という存在だと言い聞かせて身を委ねてきた。
霊媒体質、心霊を信じている身として、というか、人には見えないものを見たり感じたりする身としては、そう思うことによって、理由づけをしたかっただけだと思う。
誰かに求められる。
その人の悪いものを全て受け止める。
もう自分は死ぬんだと思っていたから、それでよかった。
関わった人たちの悪い気、エネルギーを全部受け止めて、吸収して、負のエネルギーに満たされたところで死ぬんだと思っていた。
我慢した。
嫌なことも何もかも。
ひたすら我慢した。
体調が悪くても求められれば向かう。
依代、悪い気を集めて、身代わりになる存在。
そう言い聞かせて。
だんだんエスカレートしていって、男が男を求める場所にも出入りするようになる。
暗い部屋に欲望が渦巻くところ。
精神的には絶対よくないし、悪いエネルギーやら怨念、嫉妬妬みなどの悪い気が充満しているところ。
その中で、一人、一つ上の年齢だったと思う。
生まれて初めて人と付き合うということをした。
それがきっかけで、ゲイとして生きる道を選んだ。というよりも、認めた。
けど、この人とはあっという間に別れた。
もうこの頃にはすでに、自分の性的欲求を満たすよりも、誰かの性的欲求を満たすだけの存在だった。
人のために生きなさい。
世の中のために生きなさい。
わがままは言ってはいけません。
そんな親の教えのせいだったのかもしれない。